トラック運送業経営にとっての「人手不足とリスク対応」について考える。

1.トラック運送業経営にとって、人手不足とは「管理監督者=会社で核となる人材」と「トラックドライバー」の必要な数不足と人材の資質不足の2面があります。

2.「管理監督者」の教育研修が十分行われず、いつの間にか年を取ってしまったケースが多く見られます、その結果は実務問題は解決できるが、経営的思考が不足し、それに「長」としての基礎知識が不足しており、例えば、上司と部下の関係での意思疎通ができない問題があります。

3.「トラックドライバー」不足は、仕事が回らなくなって、仕事があるのに「もの」が運べない問題があります。

4.いずれの問題も深刻で、実際どこのトラック運送業経営に大きな問題となっています。

1)人手不足とリスク対応

①限られた人材を早期に戦力化するために、「新人の受け入れ態勢を整備し仕組みを作る」

②この仕組みが、「管理者」も同時に育てられる。

 

  • これからは、採用した未経験者を教育し、育てる仕組みが必要となる。(人は更に不足する)
  • 入社後1~3カ月間の教育計画を立てて「教育研修の習熟度を確認しながら教育を進める」
  • 「先輩の背中をみて覚えろ」の方法は改める。
  • 最近の若者は「打たれ弱い」「根拠のない自信がある」「言われたことはするが、言われなければしない」
  • 指導のコツは、「根気よく指導、怒らず当人に考えさせる」「できたら褒める」
  • できれば教育責任者を専任する。

②「上司と部下」とのよい会話を制度化する。

  • よい会話は会社にとっては大事と言われている。(多くはまともに人の話を聞けない、会話ができない)
  • これが浸透すると社内の風通しがよくなる。
  • よい会話は管理者の仕事として必要であると位置付けする。(管理者の昇進する仕組みに加える)
  • ます、新人との定期面談を制度化する。(管理者は普通の会話もできないケースが多い、訓練すればよくなる)
  • 面談結果を経営者まで報告する仕組みをつくる。(上司は報告が苦手、報告書も書けないので書面で報告書を書かせる)
  • 「よい会話」の定着は、管理者の指導力が向上する。

③教育計画の作成

  • 研修は、法定12項目だけでは不十分。
  • 「教育計画」には、「経営理念」「社会人として基礎知識」「わが社の社員としても求めること」を伝えること。
  • 「プロドライバー」として身に着けるべき技術的な内容を教える。
  • 「プロドライバー」が守るべき法令を教える。

④公正な人事評価制度を構築する。

  • 社員はいつも「自分の仕事を認めて欲しい」要求がある。
  • どれをすれば昇進するか、賃金が上がるかを考えている。
  • 公正な人事評価と処遇で、社員は期待以上の能力を発揮する。
  • 運送会社の「評価制度」は「具体的でわかりやすく」「誰が見ても納得感がある」評価制度が必要。

⑤表彰制度でやる気を高める。

  • 表彰は無事故に限定せず、燃費や洗車、マナー、あいさつなども加える。
  • その他で、「社内エキスパート」を認定し表彰する。
  • 新人も積極的に表彰する。

2)値上げ交渉と契約改定の生産性アップ

①待機時間の弊害

  • 待機時間に関して、相応の対価を請求し、時間をコスト化する。
  • 待機時間削減と契約改定は数値を示して粘り強く交渉する。

②適正な運賃収受の重要性

  • 人出不足の深刻さが認知され、運賃交渉に応じる荷主さんが増えてきている。
  • 人出不足の今こそ、契約交渉を身につけ、運賃改定交渉をする。
  • その為には、日頃からデーターを収集し、データーに基づいて交渉する。

3)限られた人材の生産性アップに取り組む

①人と車両の(設備)の生産性アップ

  • 保有車両を昼夜稼働させることで設備の付加価値を高め、売上アップと賃金アップして社員採用力を高める。
  • 短時間社員と勤務時間選択制を組み合わせをして、社員の希望時間に合わせた勤務時間を設定する。
  • 夜だけ働きたいという求職者もいる、夜間配送の運賃単価が高いため相応の付加価値が得られる。
  • 働く側に合わせた働きたい時に働ける柔軟な仕組みを作る。
  • 労働生産性と車両(設備)生産性の両方に目を向ける必要がある。
  • 運送会社は設備の稼働率をあげて稼ぐ道を考える。

②機械化、システム化を導入する。

  • 人の作業を「IT」に置き換える。
  • パレット化、自動積み卸し、自動運転へ運送会社側として取り入れる。
  • 作業を見直しをして、熟練者でなくても作業ができる業務処理のシステム化を図る。

③やる気がでる「人事賃金制度」を構築する。

  • 社員の能率や働きぶりを正しく評価し、処遇に反映させる。
  • 若手や女性が「自分の将来設計が描ける」制度を構築する。

4)「働き方改革」と「人手不足解消」の二律背半の克服

①運送会社は人手不足の中で、労働時間の大幅な削減に取り組む必要がある。

②検討すべきは「賃金制度」で、労働時間の削減=賃金ダウンの単純な発想を辞めて変換を図る。

③退職者増加=採用活動のパワー増、負のスパイラルから抜け出す方策をいち早く取り入れる。

④残業時間だけで給与を決める方式から仕事の内容、能率から決める方法に切り変える。

⑤給与の現状の問題として、ゆっくり仕事をして残業が多く、短時間で仕事をこなす社員の方が給与が少ない逆転現象は起きていないだろうか。

⑥職務給、業務給、割増賃金の構成を見直し、「業務給」=仕事の内容であり、乗る車別、能率(運行回数、配送件数)の変動給で設定する。

⑦自社の強みを伸ばす、自社の付加価値を高める、「安全」「品質」は他社との差別化が可能。

⑧〇〇の仕事は△△運送に任せれば大丈夫と言われる実績を積み上げる。

⑨地域一番の評価を目指し、独自の付加価値戦略で勝ち残る。

いい社員は採用できない、いい社員を独自の社員教育で育てる

5)経営面でどのような取り組みをすべきか

①自社の立ち位置を再確認する。

  • 自社の強みは何か、弱みは何か。
  • 現荷主との関係では、1社限定から脱皮を考える。
  • 現状の問題点を整理し、将来の方向性、何を自社は目指すのか、経営者と社員の方向性を合わせる。

②分析と実行が重要。

  • 経営方針の決定。
  • 組織の見直し「会社は人と組織で成り立っている」
  • 人事、賃金、評価制度の見直しを図り、公平性と透明性を図る。
  • 「緊急度」「需要度」の優先順をつけて、愚直に実行する運送会社が業容を拡大できる。

③情報を集める、AIの進展、自動運転、ドローンなど、物流に関する情報をアンテナ高く上げて最新の情報収集が自社の事業戦略に活かせる。

④今後、更に競争が厳しさを増す中で、運送会社の選別傾向が強まる、他社との差別化を常に考えて前に進むことが重要。

物流会社43年勤務、その後10年の物流コンサルとして、言えるのは「常に前進できる」ことが最優先です。その中でも、「社員教育」が一番の要であり、社員教育を継続している運送会社が最後には生き残れます。

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