トラック運送業2024年問題について考える(第3回)

1)運転者の残業規制は、超時間労働になる長距離輸送ができなくなります。

2)仕事を分担にするために新規にドライバーを雇用するほど経営に余裕がないのが現状です。

3)輸送区間の中継地点で荷物を積み替える「中継輸送」や、輸送を鉄道や船に切り替える「モーダルシフト」へ試みていますが、どこまで広がるかは不透明な状況です。

4)今後の運送業では、仕事を減らしたり、長距離輸送からの撤退をする運送事業者が増えることで経済活動に影響がでるかも知れません。

これまで2024年4月から違反した場合
残業時間
(労使合意がある場合)
上限無し
年960時間まで運送会社の経営者らに
6カ月以内の懲役か

30万円以下の罰金
拘束時間年3,516時間
月293時間まで
(労使合同意があれば
月320時間まで)
年3,300時間
月284時間まで
(労使合意があれば
年340時間、

月310時間まで)
トラックの使用停止行政処分
休息時間1日連続
8時間以上
1日連続11時間以上
(最低でも連続9時間以上
同上

荷待ちがあるトラックの1回の運行(国土交通省調査)

1)平均拘束時間:12時間26分

2)運転:6時間43分

3)荷待ち:1時間34分      3)+ 4)で約3時間、政府目標2時間

4)荷役:1時間29分

5)点検:40分

6)残り:休憩時間

政府の対策

1)複数の運転者がリレーのように運ぶ「中継輸送」の普及

2)鉄道やフエリーを活用する「モーダルシフト」の拡大

3)「標準的な運賃」の引き上げ、下請け利用時の手数料明示

4)荷主、元請けの不適切取引を監視する「Gメン」の強化

5)荷待ち時間削減などの計画づくりを大手企業に義務づけ

6)宅配の再配置削減、「置き配」にポイント付与

・トラック運送業は、1990年代の規制緩和で新規参入が増えて、約4万社だった運送会社が約6万社に増え、結果運賃競争が激化し、仕事の量を増やすことで利益を出してきました。その結果、運転者の超時間労働が常態化につながりました。企業同士の契約のため、政府が旗を振っても業界の体質改善は簡単ではありません。

・国土交通省の調査では、トラック運送業者の約3割が「契約打ち切りの恐れが」等の理由で荷主に対する運賃交渉をしていませんでした。下請け側から運賃交渉を持ちかけるだけでは運賃改善は難しいと思います。国土交通省が荷待ち時間の削減を義務づけるのは大手だけであり、現場の改善は自主性に委ねられています。

・トラックの積載率は約4割で、荷を積んでいない「空」で走っているのも問題です。対策として複数メーカーの製品を同じトラックで運ぶ「共同輸送」が始まっています。さらに無人運転の研究開発も進んでいます。新東名高速道路で2024年度にも自動車運転車両用の車線が設けられようとしています。

・トラック運送会社の内、零細な企業が7割で赤字経営をしています。2024年問題はコンプライアンス重視の中堅、大手にとっては対策が打てるかもしれませんが、ブラックな仕事をグレーで回している7割の運輸会社は労働時間は減り、結果、売上が減少し運転者への給与が減る方向になると思います。

・物価が上がり、燃料費はじめ4費が上げるなか、結局しわ寄せはドライバーに向きます。今以上に賃金が下げれば退職者が増えて、働き手側への悪循環が予想されます。

・根本的な改革、改善が望まれますが、時間とパーワーが掛かることは予想されます。2024年以降をどう乗り切るか経営者の手腕が試されと思います。

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